「白洲次郎、占領を背負った男」を読み終えた。
こんな人が日本にもいたのかと思った。
彼は両親の寵愛を一身に受け全国屈指の名門校神戸第一中学に入学した。
でも、この学校の「暗記中心の詰め込み教育」に疑問を感じてなじめなかった。
(先生のいうことをそのまま答案にすることがそんなに偉いのか・・・・・)
そのためか中学での成績は中の下をうろうろする程度でパッとしなかった。卒業するにあたり普通なら一高や三高に進むが、成績の問題でむつかしかった。それで父親が「そんなら、留学してしまえ」と言ってイギリスのケンブリッジ大学に行くことになった。
J.J.トムソンという物理学者の試験を受けたとき、十分復習していたので自信満々であったが、結果はあまりよくなかった。がっかりしながら見たその答案用紙には<君の答案には、君自身の考えがひとつもない>と書いてあった。
彼は英国で学ぶことの幸せをかみしめた一瞬だった。
彼は後日、真珠湾攻撃の報に沸き立つ日本に対し「今に見ていろ、数年で東京は灰燼に帰す。日本の諜報機関は机上の空論ばかりで、生きているアメリカ人をぜんぜんわかっていねえ。あんな奴らのいうことなんかあてになるか!」と今日出海に語った。
敗戦後彼は吉田茂を外務大臣に押し込み、日本の国益を守るためGHQとの激しいやり取りの最前線で闘った。
白洲がいて今の日本があるのだと言える。
日本人の海外留学は減少の一途をたどっている。外国を見て回ったが、日本人の姿は見かけなくなって久しい。
息子は今イギリスで留学しているが、そのスクールでも日本人は以前はかなりいたが、5年ぐらい前から来なくなり、最近はアジア人は中国人と韓国人ばかりだそうだ。アメリカのスクールでもまったく同じことを言われた。
いま日本は第二の敗戦を迎えようとしている。アメリカのモーテルで見たテレビはすべて韓国製で、タイムズスクエアの電飾広告は(28年前に来た時は日本メーカーの看板ばかりで驚いた記憶があるが)今では韓国と中国ばかり、日本は後ろのほうでちらほら。
共産主義の崩壊と情報化が主たる原因だとは思うが、本当の原因は学校教育にあると思っている。
従来の価値観が大きく変動しているのに、学校は旧態依然とした教育にとどまっている。白洲が言った、先生のいうことをそのまま答案にすることがそんなに偉いのかに対する答えは今も全く変わらない。
子どもは一人一人考え方も発想も違う。にもかかわらず一律の考え方を子どもに押し付けて、テストを通して強制している。先生(社会から隔絶した子どもだけの空間の支配者)に社会の道理を説いてもらいたくない。
学校へ行けばいくほど、子どもの頭は固くなり、柔軟性がなくなる。学校教育で子どもの創意工夫を押し殺しておいて、発想がない、言われたことしかできないと言われてもそれは無理な注文だ。
「言われたとおり覚えろ。」と言われそれに従った子どもが優秀だと決められ、いい大学にはいり、先生の言う通り答案用紙を埋めたものだけが「優」をもらって卒業し、官僚や大企業の幹部候補生になる。
やがてそういう人が社会の中枢にいて、優秀ではあっても独自の発想も外国人に対する高度な交渉もできない。そういう人が社会を支配するようになる。そうやって少しずつ社会は敗戦に向かう。これが学歴主義の弊害だ。
明治維新以降日本は経済軍事で高度成長をし日露戦争をピークに凋落した。その間約70年。
太平洋戦争に負け今度は経済で高度成長したがバブルをピークに凋落している。その間約70年。
灰燼から70年たつと教育が成果を上げて学歴官僚が社会を支配するのではないかと思える。
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